エルちゃんのクリスマス 第9話

「空とぶはすの葉でございます」
しかし、はすの葉はどうみても狸の腹の大きさしかなく、これでは三人は乗れない。
正直、サー・カエル一人乗るだけでも乗らないのではないかと僕は心の中で思った。ただ、きっと彼にはいい考えがあるに違いない。そう思ってタローは聞いてみた。
「サー・カエル、これでどうやって3人乗っていくんだい。」
カエルの額から冷や汗が流れている・・・・。
ま、まさかそんなことすら考えていなかったのか・・・カエルは時間の番人のくせにあまり深くは考えることは苦手らしい。
「ほんと、あんたたちはだめね。しかたないわ。ここは私に任せない」
天使エルが口をだす。
「だめなのはカエルだろ。それにまだ会って5分もたっていないのに「たち」呼ばれるされる筋合いはない」タローは心の中でこう抗議した。
エルはそんなタローの気持ちはお構いなく、少しあきれ顔で、黒い帽子に手をかけた。
「ほんとはね。これだけは脱ぎたくなかったわ」
そうつぶやいて、黒い帽子をとった。
驚いた。中からは金色の長いサラサラの髪があらわれ、キラキラと風になびいている。頭上にきれいな黄金の輪も現れた。
「これが噂の天使の輪か!」タローは思わずみとれてしまった。
ただ、普通の天使と輪と違うのは輪自体がドーナッツのように太い。あまりにじーーとみていたら
「何みてるのよ」エルがこちらをにらんだ。


「うーーーーーーん」
エルはお尻をちょっと後ろに下げ、ちょっと踏ん張るようなかっこうでコブシを握り締め叫んだ。
すると彼女の背中から小さな白いものが現れた。真っ白な小さな子うさぎのようなものはみるみるうちに大きくなって、大白鳥のようになっていく。どうやら僕は本当に天使にめぐりあったらしい。
天使のエルの周りはキラキラと光っている。時間の入口まではあっという間のひと飛びだった。
白く光り輝く口を抜けると、目にも驚く光景が表れた。
なんて美しいところだろう。そこは一面、緑が広がり、小鳥たちはさえずり、小川が流れている。
時間の国の扉は開かれた。(つづく)