エルちゃんのクリスマス 第3話

気がつくと目の前に少女がたっていた。
驚いたことに、さっきとは全然違うかっこうをしている。
ドレスのような純白のワンピース姿だった少女は、赤や黄色、橙色や黄緑色、深緑など色とりどりの縞模様の服をきている。
しかもその縞模様のひとつひとつが、まるでフラフープの輪のように厚みがあり、それがいくつも重なったようなゴムのような不思議な服だ。頭には黒い三角にとがった帽子をかぶっている。帽子の上には丸い大きなボンボンのようなものがついている。
あまりに少女が派手に変身し、あっけにとられていたが、落ち着いてあたりを見渡すと、くすみかかった白の世界がどこまで続いている。
ほんと何もない。木、草、花、空、そして大地、およそ自然と名のつくような地球上にあるものここには何ひとつない。
ただ、かすんだ白い世界が限りなく広がっている。
「ココハドコ?」
少女に尋ねた。
「ココハネ。最期の世界。特定の人にしか見えない世界よ。」
「サイゴノセカイ・・・・それってどこにあるのさ」
「だから言ったでしょ。ある人にしか見えない世界なのよ。あなたはね。選ばれちゃったのよ。もうじきね。ここに来るの。今日はその予行演習ってとこね」
少女はちゃめっけのある口調で、どこか遠くを見るように話す。質問を変えてみた。
「ところで、君はダレ。」
「私は天使、大天使ミカエルさまの命によりあなたを迎えに来たの。」
「天使!!??・」
「天使ってあの天国にいる天使のことかい。」
少女のいっていることが今一つ理解できずにもう一度聞いてみた。
「えー、そうよ。私は大天使ミカエルさまの135番目の子供から生まれた天使エル。26人兄弟の12番目なの。」
少女はそう答える。
「ハハハ、冗談はよそうよ。黒い帽子をかぶった天使なんて見たことないよ。悪魔の間違いじゃないかい。それに羽根だって生えてないじゃないか。」
「あら、天使が黒い帽子をかぶっちゃいけないなんて誰が決めたのよ。それにね。悪魔は普段は気づかれないようにしっぽを出さないわ。天使だって普段はそれとわからないように羽根は出さないものなのよ。あなた、何もわかっていないのね。」


僕はふくれっつらのこの自称「天使」をじっと眺めた(つづく)