江國香織さんの神様のボート

奈良と京都にいる間にこの本を読んだ。
江國さんらしい透明でちょっとアンニュイな恋愛小説だった。
この物語は母と娘が交互に日記をつけているように淡々と話が進んでいく。
主人公は母(葉子)と娘(草子)。
小学生から中学、高校へと成長して変わっていく娘と、愛する人を信じ、変わらない母。動と静二つの視点で読むことができる。

神様のボート (新潮文庫)

神様のボート (新潮文庫)

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僕はどちらかというと葉子さん(母)の視点の方が共感できた(^^♪

私の宝物は三つ。ひとつはピアノ。二つ目はあの人、そして3つめは(草子)あなたよ。
昔、ママは、骨ごと溶けるような恋をし、その結果あたしが生まれた。

僕はまだ恋をして骨が溶けたことが無いので(笑)葉子さんの心境はすべて理解できるわけではないけれど、読んでいくうちに何となく彼女に感情移入できる。なぜかこの破天荒でやっていることが意味がないようにみえるこの人に共感できた(汗)。
それが江國さんの持つ透明感ある文章の魅力なのかもしれない。心まで透き通って見える。
葉子さんの元旦那様は桃井さんと苗字がついているのに、草子ちゃんのお父さん、彼女の最愛の人は「あの人」と表現するところが、心憎い。何となく想像力をかきたてられる。

本人いわく『この物語は私が書いたもののうち一番危険な物語』・・・だそうだ(笑)
「必ず戻る。そしてどこにいても君を見つけ出す」
「私はね。あの人のいないところに馴染むことはできないの。」
(だから一箇所に長くとどまることはできないの。その土地に馴染んでしまうから)
「私たちは神様のボートに乗ってしまったの」


恋とは信じる力。それはときには強く、そしてときにそれは狂気に満ちた力になる・・・そんなことを彷彿させる物語だった。
・ ・・・確かに危険な物語だった(笑)
遠くに行ってしまった男を待って、 母娘は引越しを繰り返す。神様のボートにのって。
あなたはこの船の先に何を見るだろうか?(感想 柵作太郎)


追伸
著者曰く一軒のバーで倒れるほど甘い金色のカクテルを飲んでこの物語は生まれたという。
そのカクテルの名は・・シシリアンキス
僕はシシリアンキスなどという洒落たカクテルを飲んだことはないけれど、一度その骨ごとと溶けるよう恋の甘さ、どんなものか試してみたくなった(笑)