長野が舞台の大林宣彦監督の「転校生〜さよならあなた」

ちょっと前、転校生を見た。
尾道から信州に舞台を移し、ひょんなことから男女の心が入れ替わってしまった中学生の心の葛藤を描く青春ファンタジーだ。
尾道三部作『転校生』『時をかける少女』『さびしんぼう』の転校生が25年ぶりに蘇った。
「50年後に長野の子供たちに見せる映画を作ってください。」
善光寺本堂再建300年を記念して長野市の有志たちのこんな言葉からこの作品は作られたという。
秋色に彩られた風景を電車が走っていく。いきなり長野電鉄の登場に僕は嬉しくなった。
(写真は映画に出てくる権堂の麺屋響。このすぐ近くに一夫の実家で使われた場所があり、今は空き家になっている)


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前作がちょっとお笑い系だったのに対し、本作はそこにノスタルジックな要素を包含させ、ちょっと切なく出来ている。
いい作品だと思う。
小林聡美さんと尾美としのりさんが演じた初作を見て、当時まだ若かった僕はどきまぎしたものだ。その小林聡美さんがもう、よ、よ、四十代なのだから僕も歳をとったということだ・・・(汗)。
主人公一美役の鳥取県出身、蓮佛美沙子さんの演技が素晴らしかった。
蕎麦屋の娘。和服姿の彼女は、心は男の子役なのに色気があった。惜しげもなく生まれたままの姿を晒すのは、彼女が後輩のO君の奥さんに似ていることもあり、僕としてはちょっと恥ずかしかったが、15歳とは思えない凛とした堂々とした演技だった。
一美の恋人、キルケゴールの「死にいたる病」を薦める哲学男の弘君(厚木拓郎)もいい味を出していた(笑)
地元の僕が見た感想は多分他の人と違っていて「やっぱり僕は信州が好きなんだなぁ」ということだった。
物語がどうのこうの言う前に長野市近郊の馴染みの場所が次々と出てくる。(以下ネタバレ注意)
主人公一美(蓮佛美沙子)の実家のそば屋さんは善光寺に老舗(門前蕎麦処大丸さん)だし、一美と一夫( 森田直幸)の通う善光寺北中学校は県立長野西校、二人の通学路は城山小学校の石段、今はなき銭湯「鶴の湯」も出ている。
一美と一夫が旅の一座と泊まった宿はあの松代の秘湯、加賀井温泉一陽館だし、他にも善光寺界隈、権藤のアーケードの路地裏、戸隠のそば畑や鏡池など長野市民も知らない長野がそこにはあった。
なぜか長野市民病院だけは実名のまま出ていた(笑)。
それだけでも僕はこの映画を見た価値はあった♪

信州の美しさ、古きよき街並みを背景に、淡々と進む物語には、意外な結末が待っている。
ピアノの弾き語りとともに最後はぐっとくる作品。特に長野の人には見て欲しい♪。

監督:大林宣彦
原作:山中恒おれがあいつであいつがおれで
出演:蓮佛美沙子森田直幸清水美砂、厚木拓郎、寺島咲、石田ひかり田口トモロヲ斉藤健一窪塚俊介宍戸錠入江若葉小林桂樹犬塚弘古手川祐子長門裕之
主題歌:寺尾紗穂「さよならの歌」
劇場:長野シネマグランズ
ホームページ:http://www.tenkousei.net/top.html

「人の命には限りがあるが、物語は永遠である」