高知県 おまんらー酒飲みやかの土佐人 前編

sakurasaku20052006-09-27

今日は河野裕さんの「よりぬき土佐落語」から冷酒の話を一席。
ティケティン♪ティン♪
昔から「阿波の着倒れ、伊予建て倒れ、土佐はノンシで飲み倒れ」と申しますが、土佐にはどうもヤチがない酒飲みが多いそうです。土佐の旦さんと丁稚の七さん、二人の会話をちょっと聞き耳をたててみましょう。
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「七(しち)よ、ちくとここへ来てみ。」
「やァ、ほんなら遠慮なしに。」
「七、オンシはいんま何と言うたぞ」
「やァ、ほんなら遠慮なしに・・・・・・と」
「遠慮なしに、どうするつもりぞ」
「お酒を頂戴します。」
「誰からや?」
「旦那からで。」
「いやというたら、どうすらァ。」
「お暇(ひま)を頂戴します。」
この佐喜浜の大百姓の家に傭われております七という人間。まっこと大酒飲み。おまけに異骨相(いごっそう)ときております。しかも中途半端じゃありません。
「七よ。おんじはとっとの異骨相じゃが、自分の異骨相を悔やんだことはないか?」
「さァ、そう気にしちょりませんきに・・・・・・」
「けんど、“こりゃジコクな。どういて俺(おら)はこう異骨相じゃろう”、こんな気持ちになったことはないか。」
「それじゃったら、一遍だけ覚えがございます。あればァ自分でジコクにあったは、生まれて初めて。あれにはこたえました。」
「ほう!そりゃどんな時じゃったぞ。」
「忘れもしません、わしが三十八の年でございました。高知のお城下を一ぺん見ちょかんことには話にならんと思いましてのう。」
「行たか。」
「行きましと!お城下へ。話に聞くと見るでは大違い。アガンボになって見物しゆうちに、喉が乾(かわ)いてきましてのう。“冷酒(ひや)を一杯飲もう”と思うて酒屋を探いたと、こう思いなんせ。ありましと、酒屋が。店先にズラリ樽が並んじょります」
「ご免よ。姐(ねえ)さん。一合枡(ます)でおおせや」
「アイ、只今」
お城下の女は別嬪の上に、愛想が良うがすのうし。腰を振り振り樽の栓をキュッと抜いて、一合枡へタップリ入れて来ましてのう。
「お客さん、容(い)れ物は持っちょりますか?」
「なんの、容れ物はこの胃袋じゃ。」
というもんで、キューッとやったところが、女はたかで目をまん丸うしちょる。それもそのはずで、旦那、酒じゃのうて、それは酢よ。
“エレ糞しもうた!酒屋と酢屋(すや)を間違えた”
こう気がついたけんど、途中で飲むを止めたら女に「酒屋と間違えた」と気ずかれたらまずい。ほんでキューッと飲んでしもうたけんど、その一杯だけで止めたら、これも気付かれますきに、
「おおの、うまい!冷酒は酢にかぎる。もう一杯おおせ。」
それもキューッとやりましたが、旦那、酢の二合はそりゃ地獄。けんど、「念には念を入れて」と、こう思いましてのう。
「姐さん、もう一杯」
3杯飲んだら、胃がきゅーとなって、そのまま倒れて寝てしもうた。
これがほんとのスヤスヤ・・やきね♪
ティケェン♪テェン、テン♪