九州珍道中 第3話 魔崖仏の伝説

その昔、平和なこの地方(国東半島)に一匹の鬼が住みだしたとさ。
鬼はこの地の人間の肉が食べたくて仕方がないが、権現さまが恐ろしくて手を出すことは出来ない。
ある日、鬼は権現様に懇願すると権現様は「下の鳥居から神殿の前まで百段の石段を造れ、そしたらお前の願いを許してやる。しかし出来なかったら、おめえを食い殺すぞ」と言ったそうな。どうせ出来ないと思い、無理難題を押し付けたのだ。
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その夜、鬼は人を食べたい一心で遮二無二、山から石を運び、石段を積んだ。
99段目を積み、100段目を積もうと大きな岩を持ってその石段を上りかけたとき、権現様は「かわいい人間が食われてはたまらない」と思い、「コケコッコー」とニワトリの鳴き声を真似た。
鬼は朝が来たと勘違いし、慌てて最後の石をかついだまま、山の中を走ったとさ。
一里半ほど走って平地に出たが息がきれて苦しいので、かついだ石を放ったら石が立ったまま倒れない。鬼はそのまま倒れて息絶えた。
以来、この地方の人たちは権現さまと岩に彫んだ大日さまのご加護に、朝夕の、感謝を忘れないという。
熊野魔崖仏の伝説である。