熊本県 あぎゃん、そぎゃん、こぎゃん、どぎゃんの熊本人 中編

sakurasaku20052006-06-27

細川の殿様が出てくる古典落語「竹仙人」の続きから。ある宿屋に一風かわった異しゅうもんが滞在している。(写真はデジタル楽しみ村提供阿蘇由布岳
「ちーっと、あんた。二階のあの客、今日でもう十日になるばい。宿賃貰わんと」
「そんなこついっとっと。家賃はお客が立つとき貰うもんって相場は決まっとる」
「そぎゃんこつ、わかっとるわばい。でもあの客汚い恰好して、朝一升、昼一升、晩一升、寝酒に一升、夜中に一升。1日に五升も酒飲んだ挙句、タイ出せ、ヒラメ出せってまるで竜宮城みたいのこついうとぉ。」
「よぉ喋るとね。わかったたい。宿賃ば貰いに行っちょくる」
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「あの、お客しゃん、おはようござりまする。」
「こら、宿屋のご亭主、おはようござる。何か用事かい。」
「へっ、あのォ〜、あんまり、よかたくないとですが(言いたくないのですが)」
「なら言わんでくださんまっせ。(なら言わんでください)」
「そぎゃんわけにはいきまっしぇん。うちにお泊り頂き十日、そろそろ宿賃ば頂きたく・・・」
「そら払わんといかんばいね。おどぎゃしこになるです?(おいくらになるのです)」
「はい、十両で」
十両、そら安い。安いコツは安いが……、金が無い。」
「そうですたいね。金やらなんやらあるわけなかですよね(金なんてあるわけないですよね)・・・・・って宿賃どぎゃんするつもりたい(怒)」
「このあたりに竹薮はなかと。それとノコギリ一丁貸してください。」
「ははぁ〜〜ん。わかったばい。あんた、わしばバラバラにして埋めるつもりたい?」
そぎゃんばかな。さしより黙って着いて来てくださんまっせ」
客は亭主と竹薮へ行き、竹ば切って帰ると何やらコツコツ作り出したとです。出来上がったのは竹で作った水仙の蕾。客はこるば売って宿賃ば払うていう。


ある日肥後の越中守の大名行列がこの宿屋の前ば通りかかるちうこったい。
ちょうど朝日がさしてくると、どう細工してあるのかわかりまっしぇんが、竹の蕾が「パチッ」といぅ音ば立てて綺麗な花が咲いたとです。お殿様は駕籠ば止め、家来の大槻玄蕃ば呼び、そん竹の水仙ばこうて来いと言うたとです。
「ホンなコツうちの殿様ば変わっとるばい。あぎゃんもん買うて来いなんて。おい、宿主こらどぎゃしこたい。(こいつはいくらだ)」
「ちーっと待ってはいよ。今作った人に聞いてきますばい。」
「おい、買い手が見つかったぞ。どぎゃしこで売るちうこったい。一両ぐらいで売ろうか。」
「一両では売れまっしぇん。」
「やっぱりそうたい。いいとこ一朱(16朱で一両)かいた。」
「違いますばい。1両では安すぎるちうこったい。他の大名なら三百両とよかたいとこるばってん、細川の越中のこつだけん二百両に負けておきまっしゅ。」
「何言うたい。相手は侍ですたい。「法外なこつ申すな」といって切られてしまいますばい。」
「侍といってもそぎゃん無茶はしまっしぇんばい。せいぜい二、三発どつかれるだけですたい。」
「そぎゃん殺生な。」
「お侍しゃん、怒ったらいかんばいばい。どぎゃんもそぎゃんもなかとです。」
「何ば訳のわからんこつばいっとる。早く申せ。」
「ほ、ほかの大名なら「しゃんふぁうりょお」ぐらいと申して。」
「そん方、飯ば食っておらぬのか、はっきりと申せ。」
「ズバリ、三百両のところを負けて二百両。」
「な、何ばいっちょるとか、たかが、竹で作った水仙の花が二百両とは……、法外なこつば申すな。」
「い、痛い。い、痛ったたたたですたい。」
お侍は怒って帰っていったとです。でも客は慌てず「亭主、大丈夫。きっとあの侍ば戻ってきて、もいっぺんあの竹水仙ば二百両でわけて欲しかていうとです」と呑気顔。
ばってん、どぎゃんしたこつでっしょ。(しかし、どうしたことでしょう)
お侍しゃん、その通りもいっぺんあの竹が買いたいといって戻ってきて、三百両で買うていきました。
「すごかですなぁ。私こぎゃんショーバイしよると世間のこつに疎くていかんばい。さぞかし有名な大工の方と思いますばってん、先生のお名前ばお聞かせ願えんでっしょか。」
「名乗るほどんもんではなかですが、わしの名は左甚五郎。」
「わ、わ、わ、わぁ〜〜。あの有名な甚五郎先生。でもうちのかくさん(奥さん)ぼやいとりました「先生1日に、酒ば5升も飲むって」。」
「それば言われると辛かと。」
「辛かこつなかとです。先生だったらでも五升でも、一斗でも飲めますばい。」
「ん、なんで、しっとっと。」
「先生、ショーバイ大工しゃんですたいね。大工だけにノミ口ばしっかりしとります」
(つづく)