若年性アルツハイマー病をテーマにした明日への記憶の感想

sakurasaku20052006-06-16

監督:堤幸彦
脚本:砂本量、三浦有為子
出演:渡辺謙樋口可南子、坂口憲ニ、吹石一恵香川照之水川あさみ田辺誠一木梨憲武及川光博渡辺えり子袴田吉彦大滝秀治
原作:萩原浩「明日の記憶」(光文社刊)
劇場:長野東宝劇場
公式ホームページ
http://www.ashitanokioku.jp/
もうかなり前なのだが、評判の良い映画ということを聞いて渡辺謙さんと樋口可南子さんの「明日への記憶」を見た。
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で、感想はというと
途中わんわん泣いてしまった。
私にとって感動というより、自分を見ているようで身につまされる作品であった。
「ビシッと行こう」
主人公は仕事に気合を入れてバリバリこなす、広告代理店部長佐伯雅行(渡辺謙)。取引先からの信頼も厚い。50歳といえばまだまだ働き盛りだ。
そんな彼に突然、襲ったのはちょっとした頭痛や物忘れ・・・
そして医者から「若年性アルツハイマー病」という宣言。
もし、今までの自分が消えてしまうのなら―――――
私が注目したのは今まで仕事人間だった男がその仕事がなくなったとき、彼は何を目的に生きていくのだろうという点である。
彼は同僚から病気を密告されたような形で営業という花形の仕事から閑職に追いやられ、やがて退職を余儀なくされる。
彼は働けなくなった自分が「何の役にも立たない。妻に迷惑をかけているだけ」と苦悩しながらも、自分ではどうすることもできない。
自分を失っていく毎日に恐怖する男性の落胆、絶望、苦悩渡辺謙さんが全身全霊をこめて演じている。
妻の前で、部屋の隅に縮こまり、背中を丸め、わんわんと泣き叫ぶ彼の姿を見ていると、まるで昔の自分を見ているようで泣けてきた。
それでも「○○」といった佐伯(渡辺謙)の言葉がとても印象に残った。
そして、そんな夫を「家族だもん。私がそばにいますから。」といって支える妻実枝子(樋口可南子)さんもすごいと思った。普通なら逃げてしまうところを夫の病気をあるがままを受入れ、真摯に立ち向かう彼女の姿は強く、そして優しかった。
(○○の部分はネタバレになるので書くのやめました。でも結構ネタバレでごめんなさい)
阿弥陀堂だより」でも思ったが、夫婦愛をテーマにした作品では樋口可南子さんの演技は後になってずしんとくる。
この映画、妻にあらためて感謝したいという気持ちになる作品である。
樋口可南子さんはインタビューでラストシーンの渡辺謙さんを見て、とてもきれいな光が走ったといっているが、その光景はなんともいえない表情で是非注目して見て欲しい。
テーマ的には韓国映画の「頭の中の消しゴム」やアメリカ映画の「君に読む物語」に似ているが、この作品には邦画としてのまた違った良さがある。
決して楽しいという作品ではないが、自然の美しい映像が、深刻な物語を優しく包んでくれる。
ロケ地に信州の安曇野ちひろ美術館いわさきちひろ)が使われており、花が美しかった。
劇場は圧倒的に年配の女性の方が多かったが、こういう映画こそ働き盛りの男性に見て欲しいと思った。
「夫婦でともに生きる」ということを問いかけた心を揺さぶる作品であった。