日本のまんなか、東西の交流点静岡県 後編

前回までのあらすじ

静岡県はその昔、遠江駿河、伊豆の3国に分かれ、地域によって県民性も違う。
遠州地方には名古屋文化圏に属し、遠州泥棒という言葉があるくらいで、経済観念がしっかりしていて、猜疑心が強く、細かい人が多いという。
だが、「ようし、やろうぜ」「やってやろう」という意味の「やらまいか」精神を持っており、その精神が多くの起業家を生んだ。
駿河地方は清水の次郎長に代表されるような義理人情型が多く、おっとりのんびりしている。急激な変化や争いは好まず、老舗が多く殿様商売しているところが多いという。
伊豆地方は独自の文化圏を作り、一般に北伊豆は進取の気性を持ち、頭でっかち、南伊豆は独立心旺盛な人が多いという。伊豆乞食(伊豆に行けば乞食も食うのに困らないという意味)という言葉もあるそうだ。
「食うに困ったら、押しの強い遠江の人間は強盗をする、消極的な駿河の人間は乞食になる。ずる賢い伊豆の人間は詐欺をする」とも言うそうだ。

そして、もっとも平均的な日本人が住んでいる場所
それが静岡県だそうだ。
その理由は東西の接点、日本の真ん中が静岡県であるからだとも言われている。
ご存知の方も多いと思うが、富山県糸魚川静岡県富士川を境界に電気の周波数は東が50ヘルツ、西が60ヘルツと東西に分かれている。
地質学的にみてもフォッサマグマが地下を走っているので東西の分岐点といえる。
東西の文化が混ざり合い、総じてなんでも受入れる柔軟性と平均的趣向を持っているため、各メーカーの新規商品の先行販売、マーケティングの対象となってる。
もっとも、交通の便が良く比較的都心に近いということと、新しいものを職場や学校で見せびらかすのが好きという県民性がこの対象となった理由でもある。
お茶の産地としても有名で、茶園面積20300ha、荒茶生産量44200トンはともに全国1位、*1お茶の消費量も全国1位である。
また、ホンダ、ヤマハ、スズキ、カワイ楽器など数多くの企業が生まれ、製品出荷量が日本第5位と全国有数のモノ作り県でもある。ベンチャー企業数が日本で第4位と、ベンチャースピリット溢れる土地柄ともいえる。
特にピアノ生産は45,493百万円で全国NO.1*2、他にも羽毛ふとん、CDレコード、温度計、プラモデルなどの出荷額が全国1位である。
サッカー王国としても有名で全国で1番多くJリーガーを輩出(2005年度70人)している県でもある。
意外なことに旅館施設の数が北海道や長野を抑え1位(4433件)。また、日本で一番の強い風が吹いたのは昭和41年9月に富士山で観測した最大瞬間風速91.0m/sであるという。
こんな静岡県人は総じて順応性が高く、人当たりがよく常識的で、相手の意見を受入れる県民といわれている。
言葉を代えると敵を作らない「いい人」たちなのだ。
こんな静岡県人と付き合うには難しいことはない。「飲みにいくら」と誘えば、付き合いの良い彼らは必ず来てくれる。
焼酎を緑茶で割って、フジヤマやサッカーの話で一緒に盛り上がろう。風の谷ビールを飲みながら、黒はんぺんをおつまみに語り合うのも良い。
その際、浜松と静岡はライバル関係にあるから双方の話は避けたほうが良い。県内には静高という派閥もあるそうだから、出身校にも気をつけた方がいい。
多くの人がマイ湯飲み茶碗を持っているので、緑茶をゆっくり飲んで(ときに食べて)*3談笑してもいける。
日本の真ん中、東西の文化が融合する日本のトルコ「静岡県」、大らかで明るい「いい人」たちの彼らにはありのままの自分を曝け出せば、きっとあなたを温かく迎えてくれるに違いない。
駿河路や 花橘に 茶の匂い
松尾芭蕉が詠った句のように豊かな自然とお茶の香りがたちこめる静岡県をあなたは愛さずにいられない
静岡の県花:もくせい/県木:ツツジ/県鳥:三光鳥/県民歌:明け行く朝、富士よ夢よ友よ

*1:2004年統計資料では全国のお茶の45%は静岡で生産されている

*2:ピアノはほぼ100%静岡県で作られている

*3:茶の新芽を天ぷらにすると非常においしい