話の流れで手術することになりました

昨日医者に行って来た。私は2週間に1度定期診療を受けている。
直接病気とは関係ないのだが、左手の手のひらに小学校の頃から何か異物が入ったままになっており、最近それが時折痛む。
たぶん、子供の時分のことだから鉛筆の芯か何かだろうと思っていた。
せっかく病院に来ているのだからついでに診てもらおうと、皮膚科によってみた。
先生手を見るや否やいきなり
「うーん、これはたぶん異物の周りの肉が変形し、そこに腫瘍が出来ている。手術でそれごと取っった方がいいね。」
腫瘍、医学の専門用語がわからない私にいきなり聞き捨てならない言葉が出てきた。それに先生は「お茶でもしない」と軽く誘う口調で手術という言葉が出てきた。
私は少し警戒をほどいて
「先生、腫瘍って何ですか。放っておくとどうなるのですか。」
「別に今すぐどうこうってことはないよ。ただその部分に何かの拍子でばい菌が入ったりすると厄介だよ。まあそのままにして置いても命に別状はないけどね。」
単に皮膚科に来ているだけなのに命の別状とは穏やかでない。
「先生、ということは手術してもしなくてもいいってことですか。」
「うん、君がしたければすればいいし、したくなければしなくてもいいよ。」
私はこの言葉に先生からの挑戦状を受けとった。
父が手術するか迷っていた時どうせならやりなよと背中を押したことがあった都合上、嫌というのは癪に障る。断れば武士の名折れ。いや、待合室で坊ちゃんを読んでいたので、頭の中が主人公坊ちゃんと同じ江戸っ子気質(べらんめえ気質)になっていただけかもしれない。
即座に「やります」と答えてしまった。
話の流れでいきなり手術することに、お金もないのにつくづくアホな男だとそのとき思った。
「じゃあ血液検査からはじめよう。」
この先生、今日はじめてあったのにいきなりここで手術をやりだすのか。もし本当にそうだとしたら何と乱暴な先生なのだ。
私は密かに先生への疑念を抱いた。その殺気を先生の方で悟ったのか
「今日、手術するわけじゃないよ。まず血液検査をして体の状態を調べてね。手術は来週、当日は同意書がいるからね。今から手術の手順を説明するから、当日この同意書に名前とサインをしてくれたまえ。」
既に先生やる気満々である。私はもともと小心者であるから今更やめますともいえない。仕方なく説明を聞くことにした。
手術といっても麻酔をして、手を切って異物を取り出し、消毒して針で縫う、概ね1時間ぐらいで終わるとのこと。ただそれだけのことである。
何の事はないが、何のことはある。
私は不穏な心を抱えたまま、じっと手を見た。
まあやると言ってしまったから仕方ない。
期日は来週の月曜日。ちょっと長い1週間になりそうだ。