桂望実の県庁の星

友人の勧めで県庁の星を読んだ。
県庁の星とはある県庁エリート職員が県知事の気まぐれな発想で民間会社に1年間派遣されることになり、スーパーの職員となる。何事もマニュアル主義のお堅い県庁職員が、そこに働く社員と触れ合うことで人間的に成長するという物語である。
「それじゃどうやって県民のこと知るの」
「様々な数値がありますから」
県庁さん(野村聡)のちょっと常識はずれのところが面白い。
県知事の気まぐれな発想という点が長野県の田中康夫知事に似ている点*1と自分も畑違いの部署からスーパーの副店長をやった経験から何となく親近感があって読み始めたが、読んでいるうちにはまってしまい1晩で読みきってしまった。
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何でもマニュアル主義、現場の経験より数値を重んじる。そんなガチガチのエリート県庁職員がお店の主任パートさんから客の目線に立つことを教わり、店の改革に乗り出していくストーリーはテンポよくスピード感があるので面白い。
現場を知らない彼が他のスーパーや百貨店、お肉屋さんで勉強しながら、一生懸命売上を伸ばそうと努力する。まるで1年前の自分を見ているようだった。
さすがにうちの店には惣菜を二度上げするような人はいなかったが、スーパーの裏事情を良く描いていると思った。
「できるわよ。阪神だって優勝したことあるんだから」
二宮泰子さんが阪神ファンなのもこの小説が好きな理由だ。
三流スーパーが立ち直っていくところはスーパーの女のようだが、渡辺主任がサボって病院にいる子供に物語を聞かせてあげる話など随所に心温る話が隠されている。謎の浮浪者の部長と犬も物語に良いスパイスを加えている。
映画ではずっと若返っているが「中年」「バツイチ」「子持ち」の二宮さんも魅力的だ。
惣菜チーム、鮮魚の主任、店長、フロア主任いろんな人の人物像がすぐ浮かぶのがこの小説の良いところだ。私にとっては面白い本であった。

*1:現に長野県では中堅県庁職員を民間会社に派遣する研修制度を田中知事のもと進めていて、私の会社にも県庁職員が来たことがある。また長野県教育委員会では先端技術研修といって公立高等学校の教職員を民間企業等の研修機関に派遣する制度がある