いっごそうとはちきんの国 高知県 

咲いた桜になぜ駒つなぐ 駒が勇めば花が散る
何をくよくよ川端柳 水の流れを見て暮らす

司馬遼太郎 「竜馬がいく」より
33歳という若さでこの世を去った幕末の志士、坂本龍馬
幕末の混沌の時代を疾風のように駆け巡り、理想に生きて純粋のまま死んだ男。
その坂本龍馬が生まれ育ったのが男たちの国土佐こと高知県である。
高知県といえばこの坂本龍馬の他にも、土佐の一本釣りかつおめし、土佐犬足摺岬、どろめ祭り、四万十川山内容堂阪神タイガースのキャンプ地安芸などが思い浮かぶ。
高知出身の有名人には幕末の志士坂本竜馬中岡慎太郎板垣退助、元総理大臣浜口雄幸吉田茂、作家の宮尾登美子三浦朱門、漫画家黒鉄ヒロシ、歌手の岡本真夜ソニン(本籍は韓国)、島崎和歌子、俳優で高地東生、広末涼子、お笑いの横山やすし・西川きよし間寛平プロ野球選手では阪神タイガースの不動のセットアッパー中西清起藤川球児らがいる。
私が高知といってまず浮かぶのが豪放な語り口、土佐弁である。
「あまんらーなめたらいかんぜよ」
年配の方なら村田英雄の「男の一生」の冒頭の台詞を思い浮かべるだろうが、私はスケバン刑事麻宮サキ南野陽子)の決め台詞を思い出す。
勝気でおてんばな女性を高知では八つの金と書いて「ハチキン」と呼ぶそうだ。
意味は高知の女性には聞かないほうがいいらしい。
でも、
はようきとーせ
勝気な女性から土佐弁でこういわれるとなぜかドキッとする。
昔「はいからさんが通る」の花村紅緒さんは高知女性だと思っていたがこれは違うらしい。そういえば、あの映画も南野陽子さんであった(伊集院忍は阿部寛)。
高校の頃、彼女のファンだったことを少し思い出した。
一方、高知の男性を「いごっそう」と呼ぶらしい。
頑固で負けず嫌い、わがままで我が強いという。
したがって高知の夫婦喧嘩はどちらも譲らずとても派手であるときく。
私の中の高知県男性は坂本龍馬のイメージが強い。
昔読んだ漫画に高橋よしひろさんの「白い戦士ヤマト」という本があったが、そこでは土佐の犬まで豪快であった。*1
土佐弁には他にも
「なんぼゆーたちいかんちゃ(いくらいってもだめです)」
「やりゆうかよ(やってますか)」
「まっこと言うこときかんねぇ(本当に言うことをききません)」
などの表現を聞いていると、なぜか頬が緩んでしまう。これはストレートな言い方の中にも、どこか愛情深さを感じるからだと思う。
そんな高知で抑えておかなければならないことがある。
高知県人はほとんどが「酒豪」であるということだ。
なんと言っても宴会が日常的にある。
他の県民が食事するのと同じ感覚で飲み会をしているのではないかと思うぐらい宴席が多いと聞く。お酒のあまり飲めない私には住みにくそうな県である。
成人1人当りのアルコール消費量は東京、大阪に次いで全国第3位であるが、東京や大阪は県外から来た人のアルコール消費も多分に含まれているため、実質は全国1位といってよい。
高知では「お酒1本つけて」の1本は徳利1本ではなく一升瓶のことである。
あまり飲めない人には要注意の県である。
この「あまり」という言葉も迂闊に高知では使ってはならない。
高知で「少々飲めます」ということは「升升飲める」ことを意味し、お酒を2升程注がれてしまうという。気をつけた方がいい。
注がれたお酒は飲み干して返す「献杯」という制度が未だ存在するのも高知県の特徴だ。
四国の小噺に「思いがけなくお金が入ったらどうするか」という問いがあるが、
愛媛県人は「何か買って使ってしまう」といい
香川県人は「そのまま貯金する」と答え、
徳島県人は「それを元手に金を増やして貯金する」
と答えるのに対し、
高知県人は「飲む」と答えるそうだ。
しかし、その結果、高知県は病人の数や医療費が他県に比べ高い。
人口10万に当りの病床数2300は全国1位。老人の入院患者の平均在院日数も55日で全国1位。老人一人当りの医療費は約50万円で北海道に次いで2位。見事な数値である。
もっとも平均在院数や病床数が多いのは高知県人には「いごっそう」が多く、医者や治療方法が気に入らないと自分で勝手に病院を変えてしまったり、医者の指示に従わない患者が多いせいだともいわれている。
一人当りの医療費が全国最低で国の医療費削減には貢献している長野県人からすると「何をしちゅうか」という感じである。
また、宵越しの金は持たないことを美徳とし、ギャンブル好きで大酒飲みというのが高知県男性の特徴のようだ。
事実、仕事以外の余暇の時間が一番長いのも高知県だし、収入における娯楽費の割合が一番高いのも高知県である。
逆にいうと太く短く、人生を楽しんでいる羨ましい県民である。

そんな高知県人と付き合うには、やはり飲みニケーションが一番のコミュニケーションのようだ。
ひまわり牛乳を1杯飲みほして、胃腸薬片手に宴席に参加する。ちょっと健康には悪そうだが宴席に参加するのが高知県人を知る一番の方法である。
但し、飲めないなら初めから飲めないと言っておこう。
彼らは女性も含め男気のある人たちなので一気飲みのように無理に酒を進めたりしない。
だから、酒と肴を囲んで坂本龍馬談義でもすれば、きっと彼らはあなたのことを認めてくれるに違いない。
なぜなら南国土佐には一本気な人たちが多いのだから。
高知の県花:山桃/県木:ヤナセ杉/県鳥:ヤイロチョウ//県魚:カツオ

土佐弁翻訳ページ

*1:横綱犬土佐王のこと