レディ・ジョーカーの感想

先週、高村薫原作平山秀幸監督のレディー・ジョーカーを借りてきてみた。
平山秀幸監督というと私の中では魔界転生戦国魔神ゴーショーグン学校の階段などSFやホラー映画を作るイメージであるが、本作品はとても渋い映画である。

死ぬときは人も馬も一緒だ
だれも恨むわけにもいかねぇ。
でも、あんちゃん、人生にはふと、鬼が訪れることがある。

物語は吹雪の中、渡哲也のこの渋い台詞からはじまる。
50年近く前の事件に端を発し、現代に生きる主人公たちのそれぞれの運命が複雑に絡み合い、そして誘拐事件へと発展していく。
本作品はもともと「グリコ・森永事件」に着想を得て書かれた小説が原作である。
高村薫さんの原作らしい重厚感ある内容で、分厚い原作を読んでいない私にはストーリーについていけないという罰が与えられてしまった。

「あんたたちには、わかりゃしないよ」
主人公の物井(渡哲也)が城山社長(長塚京三)にいう言葉が、
そっくり私にいっているように聞こえ、どきっとした。
内容はともかく、この映画は配役がいい。
なんといっても目立ったのが、レディー・ジョーカーの一人、
警察組織を裏切り、ニヒルな半田刑事役を演じた吉川晃司。
「つかまえられないよ、あんたには」
半田刑事(吉川晃司)を問い詰める合田刑事(徳重聡)に言ったこの言葉は渋かった。
5人のレディ・ジョーカーはそれぞれ個性があり良い演技をしている。
物井清三(渡哲也)半田修平(吉川晃司)布川純一(大杉漣
高克巳(吹越満)松戸陽吉(加藤晴彦

とーーても渋い映画である。
私としては、このレディー・ジョーカー役に寺島進さんも入れて欲しかった。
犯人役のキャストは良かった(逆に刑事側はイマイチだったが)
それにしても渡哲也の演技は渋い。とても熟年離婚の雰囲気はない。
「レディはババなんかじゃない。あんたの娘だ。」
物井(渡哲也)が布川(大杉漣)にいう台詞にはビビッとくる。
雪の中の競馬場のラストのシーンも良かった。
しかし、映画化にあたり分厚いストーリーを集約したせいか
わからないこともいくつかある。
城山佳子(管野美穂)の父がなぜ突然自殺してしまうのか。
そもそもレディージョーカーたちのねらいは何なのか。
彼らがなんのために集まってきたか、
などの描写が抜けているため少しわかりにくい内容となっている。
要求は20億。人質は350万キロリットルのビール
コピーは良いが監督の力量が少し足りなかったのではと感じる映画である。
高村薫さんの原作が素晴らしいと聞くとちょっと残念な気がする。