はだかのひつじ

緑が広がる野原に、まっ白なひつじとまっ白なやぎがいました。
真っ白なひつじは、とても柔らかい、すてきな毛をもっていました。
あるとき、やぎは、ひつじに、いいました。


「その白い毛、すてきね。いつもモコモコして暖かそう。」
すると、ひつじはいいました。
「とんでもない、やぎさん、お日さまの照っている日には、暑くて、暑くて。」
すると、やぎはいいました。
「あら、ひつじさん、その毛で包まれたら、気持ちよさそうよ。」
すると、ひつじはいいました。
「とんでもない。やぎさん、ぼさぼさ毛なんて、わたしにとっては、ちぃーとも気持ちよくないわ。」
すると、やぎはいいました。
「あら、ひつじさん、だったら、その毛をみんなにわけてあげたら。みんな、喜ぶわよ。」
すると、ひつじはいいました。
「とんでもない、ひつじさん、この毛がちょっとでもなくなると思っただけで、わたしゃゾクゾクするわ。」


そうやって、ひつじは自分の毛に文句をいいながらも、大事に、大事にしていました。
そして、月日は流れ、夏が過ぎ、秋が過ぎ、冬が過ぎ、また、春になりました。


ある朝、ひつじが目を覚ますと、見知らぬ人間たちが身のまわりに大勢取り囲んでいます。
「な、なんだろう。」
人間たちは手にバリカンを持っていました。そのバリカンで、あっという間に、ひつじの毛は刈り取られてしまいました。
はだかにされたひつじは、草原に、ただ一人、取り残されました。
ぽつんと立ちつくすひつじ・・・
ふと、下を向くと、地面の上に刈り取られた自分の毛がひとかたまり残っていました。
ひつじはそっと、そこにほほを近づけました。
「めぇぇぇ・・・・」
ひつじは、生れてはじめて、心の底から、気持ちよさそうな顔をして、鳴きました。


おしまい。


ちょっとシュールな物語。あなたは何を感じましたか?今日も最後まで読んでくれたありがとう。