岩石岩男物語 第1話

「なぜ、わたしだけ、こんなのだろう。」
まいは、空を見上げていた。
冬の嵐の合間を縫って、雲ひとつないきれいな青空が広がっている。
見渡せば、キラキラと光る一面の銀世界。
この里山ではひと晩に1メートル以上の雪が降る。
雪が降ったあとは、田んぼも、みくちゃんちも、めぐちゃんちも、みんな、みんな雪に埋まってしまう。そこにあるのは、ただ、ただ、白い世界。
太陽と雪だけの世界。
ほかの子たちは、雪は嫌いだというけれど、まいは、この雪に閉じられた世界が好きだった。
「みんな、いなくなっちゃえばいいんだ、」
心の中で、悪い子のまいがこう叫ぶ。まいが言葉を失ってから、3カ月がたとうとしていた。
(つづく)