エルちゃんのクリスマス 第10話 ようこそ はるのくに

なんて美しいところだろう。
一面、みどりが広がり、たくさんの小鳥たちはさえずり、さらさらと小川が流れている。
タローは今までこんな美しい光景を見たことがなかった。
気がつくと、天使エルもサーカエルもいない。
どこにいってしまったのだろう。
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ピヨピヨチュチュチューピピピーー クィクィクィ〜♪
頭の上から美しい鳴き声が聞こえてきた。
見上げると、かわいいカナリアだった。
レモン色に覆われたカナリアは黄金のようにキラキラと輝く羽根を持ち、その声は美しさの中にもうららかな優しさがある。まるで春の妖精のようだ。タローはうっとりみとれ、その場で動けなくなってしまった。
ピウ〜ピヨピー
カナリアが歌いだす。すると今度はカナリアの口からたんぽぽのタネのような小さな白い綿帽子がカナリアの美しい声とともに空中に舞いだした。その綿帽子は太陽の光に反射して、ひとつひとつが赤やだいだい、みどりやあお、あい色や紫色に変わっていく。
虹がダンスしているように七色の綿帽子が楽しそうに動くさまはタローはその場で立ったまま眺めた。
やがてカナリアの歌がやむと、綿帽子は再び白に戻り、はらはらと大地に落ちていく。


すると不思議なことが起こった。
大地に落ちた綿帽子から、小さな若葉が飛び出し、そこから小さなつぼみがあらわれた。小さなつぼみは瞬く間にふくらんで、中からハイビスカスのような大きな花がパッとさいた。
大地にちらばったどの綿帽子が一斉に大きな花が咲きだし、たちまち、緑の大地は赤やだいだい、みどりやあお、あい色や紫、色とりどりの花に覆われた。なんて不思議で綺麗なのだろう。
だが、よくみるとその花はふつうの花とちょっと違う。よくわからないけど何かが違うのだ。
気がつくとタローは背筋がぞくっとし、身震いしていた。
きれいな花をみて、身震いしたのはタローにとってはじめての経験だった(つづく)




今年一年ありがとうございました。今年は夫婦二人アパートで年を越します。皆さん、良いお年を