未来の記憶 後編

sakurasaku20052007-07-29

「それって、僕の記憶がなくなるってことですか。」少しだけ手が震えた。
先生は僕の目を見てゆっくり言葉を選びながら喋り出した。
「歳をとれば誰しも脳は衰えてきます。さくさんは人よりちょっと早くその時期がくると考えられてはいかがでしょうか。」
「日常生活にはどのくらい影響が出ますか」
「多分、症状が進めば、今のようなお仕事は続けられなくなるでしょう。パソコンを使う仕事はやめた方がいい。出来れば、絵を描くとか、楽器を弾くとか、手を使ったことをやられた方がいいと思います。」
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先生の額に少しだけ汗の玉が光った。
「やだな。先生。パソコンなんか一番手を使うじゃないですか。」
「ブラインドタッチは手をつけっているようで脳は使ってないのですよ。むしろ脳を鍛えるというより消耗させる傾向が強いのです。」
「手を使う仕事か。苦手なのですよ。絵を描くのも、楽器も・・(汗)」
「苦手だからこそやったほうがいい。ブログを書かれるなら、手書きでかかれてはいかがですか。」
(あまりに真面目に言うから心の中で吹き出してしまった。先生、手書きでブログは書けないだろうが)
「あとどれくらいで・・」
「わかりません。ほんとにさくさんのように事例は珍しいのです。10万人に1人といってもいいでしょう。」
「なんだ、先生、結構たくさんいるじゃないですか(笑)」
「さくさんのような病気になられた方の中でそういう症状になる確率です・・・・」
どうやら僕は神に選ばれし人間らしい。
不思議と涙は出なかった。
神様が選ぶ限りは僕には僕にしか出来ない何か使命があるのだろう。最近、僕の取柄は自分を客観視できる(笑)


「さくさん」帰り際、看護婦さんに呼び止められた。
彼女は何かとよく面倒を見てくれる♪長い付き合いのせいなのか?それとも僕は母性をくすぐるタイプなのか(笑)いつも親切にしてくれる。
「私ね。明日はどうなるかわからないって思って生きているの。人間なんて明日のことなんてわからないでしょ。明日になれば死んじゃうかもしれないし。だから、今、生きている今が大事だと思っているの。」
「○○さん、僕がこんなことを言ったら説得力ないかもしれないけれど、そんな刹那的なことを言ったらだめだよ。人間はね。今日だけじゃなく、明日のために生きてるんだよ。明日を信じることから夢や希望は生まれくる。今を大事にするのはとってもいいことだけど、明日も大事にしないとね(*^_^*)」
病室を背に後ろを振り向くと、なぜか僕ではなく彼女が泣いていた。


今日は選挙だ。
僕はその明日を信じて、期前投票してきた。世の中少しかわってくれるといい(*^_^*)