千の風になって

sakurasaku20052007-06-13

水無月入梅の季節。そんな季節にあなたは旅立ちましたね。
父が人前で、大声で泣くのをそのとき初めて見た。
僕はなぜか泣けなかった。
あなたとは僕の叔母のこと。生涯独身を貫いたので、小さい頃から子供のように可愛がってくれた。彼女は僕のメンターだった。(写真はフォトライブリー様提供青空と樹)
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多感な年頃、父や母の悪口を言っても彼女はこう嗜めた。
「だめよ。お父さん、お母さんをそういう風に思っちゃ。二人にだって事情があるのよ。○○ちゃんは(僕の本名)相手の気持ちをわかってあげられる人間になりなさい。」
そして、こう語りかけた。
「一度しかない人生よ。自分にだけは絶対嘘をついちゃダメ。悔いが残るから。」
僕は未だにあんなにも明るく、まっすぐな人を見たことがいない。誰からも愛され、優しく強い人だった。


ガンという病気は本当に怖い。
抗がん剤は痛みと副作用との闘いである。
それでも彼女は愚痴や恨み言を一言もいわなかった。僕の前で笑って言った。
「よく見ておきなさい。人は誰しも死ぬものよ。自分の死を受けいれられたとき、本当に生きているって意味がわかるから。」
だけど、僕は弱い人間だ。辛かった。「東京タワー」のオカンのように苦しむ姿を見ていられなかった。いたたまれなくて病室を抜け、忙しいといって、見舞いにもそれほど行かなかった。
今になって思う。彼女の言葉をもっと聞いておけばよかったと。問題から逃げると、それは倍になって自分に返ってくる。病気になって、どうしていいかわからなかった時、心の中で叫んだ。「助けて、おばちゃん」
あの時、彼女が生きていたら何て言ってくれただろう?今となってはその答えはわからない・・・・

失敗は心の糧となる。
僕は今、父と母がどんな環境で育ち、どうやって生きてきたかを学びたいと思っている。生きている間に出来るだけその言葉を聞きたいと思っている。


彼女の死は安らかなものだった。最後はモルヒネを使った。
今でも覚えている。あの安らかな死顔を・・・。
溢れる涙で文字が見えない。5年たった今、初めて嗚咽するほど泣いた。だけど、これでやっと、悲しみと後悔を涙が洗い流してくれる。
叔母ちゃん、いっぱい、いっぱいありがとう。そして、ごめんなさい。
今なら言える。僕はね。ほんの少し強くなったよ。だから、あなたの分まで生きて、あなたの教えを実践してくよ。だからね。千の風になって見守っていてね。
http://www.mahoroba.ne.jp/~gonbe007/hog/shouka/sennokazeninatte.html
今日は彼女の命日。関係ない読者の方も、良ければ(強制ではありません)一緒に冥福を祈ってほしい。
青空の向こうにむかって。