浅田次郎さんの月島慕情

浅田次郎さんの本を初めて読んだ。
本作の舞台(主人公の出身)が信州諏訪だったのと、彼の直筆サインが入っていたという単純な理由からだ。
だけど、知らなかった。彼はこんないい作家だということを。
不覚にも新幹線の中で涙した。彼は人生の機微を見事に描いている。

月島慕情

月島慕情

まあ、いいではありませんか♪甲信越ブログランキング
「あたし、あんたのおかげで、やっとこさ、人間になれたよ。」
三十を過ぎた吉原の女郎・ミノにふってわいた"幸運"。自分にふさわしい幸せを見つけた彼女の人生の選択とは?
解説にはこう書かれている。
その言葉通り、表題の月島慕情は女性の愛の強さ、切なさを描いている。

『あそこさえ行かなければ幸せは掴めた。でも、まがい物の幸せはいらない。』
彼女の言葉がまだ頭の中でこだましている。この衝撃、リリー・フランキーさんの「東京タワー」以来だ。この作品を含む7編の短編集はどれもいい。


銀行をリストラされ(自主退職)、ある会社のお抱え運転手になる男の物語、シューシャインボーイも良かった。
主人公塚田のサラリーマンとしての悲哀、そして突然仕事を辞めた妻のとまどい、僻みがよく描かれている。実際、同じような経験をした私は彼の想いが伝わってきた。
それにしても最後の菊治の手紙はずるい。目頭が熱くなって勝手に涙がこぼれた。
なぜ彼は感情の機微がわかるのだろう。ほんとずるい(笑)
彼の作品は若い人には難しいかもしれないが、その深さ、味わいは格別のものがある。ちょっと人生につまずいた方に読んで欲しい。
だけどハンカチは忘れずに。さもないと列車の中でトイレに書き込むことになりますよ(笑)