江國香織の「号泣する準備はできていた」の感想

連休中、新潟にいる間、嵐でどこにもいけなかったので、私は本を読んだ。久しぶりにゆっくり読書ができ、一気に4冊ほど読めてしまった(笑)
その中で「濃密な恋と、絶望、そして優雅な立ち直り方」。透明な12の物語。
この帯の文字に惹かれて読んだのが江國香織さんの「号泣する準備はできていた」である。
江國さんは言葉の使い方がうまい。
恋愛、仕事、日常生活。そうした中で恋する女性たちの心情を赤裸々にうまく表現している。
なかでも私は専業主婦の日常を描いた「こまつま」が面白かった。
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物語の概略はこうだ。
こまつまと呼ばれる彼女。こまごまとこまねずみのように働くという意味で夫が名づけた。その彼女はデパートが好き。でも決して長くは滞在しない。短い時間に効率的に買い物が出来る自分に誇りを持っているから。そんな彼女が、デパートの屋上で・・・・
彼女の言動は、専業主婦のプライド、孤独、そして、主婦という仕事は誰からも褒められるわけではない切なさがこめられている。
男性の私からはそんな彼女はちょっと可愛く見えた。
他にも「号泣する準備はできていた」「熱帯夜」「そこなう」など江國ワールドにふさわしい作品が揃っている。


私はタイトルから号泣する準備は出来ていたのだが、ちょっと主旨は違ったようである(汗)
自分のために離婚した男ともう二度と会わないと思う女。
肉体関係があったこ男友達?に抱き寄せられ笑う女。
浮気をしている夫のために彼の好きな夕食を作って待つ女。
夫との離婚を考えながら、夫の母と一泊旅行に出かける女。
彼女の物語に出てくる女性たちみな怖い。それは、男性から受けた傷を、直接的でなく間接的に復讐しているからだ。
彼女は美しい言葉を使って表現するので、さらりと読めるが、冷静に考えると、かなり背筋がぞくっとくる作品である。
彼女のシンプルな文体の奥に女性の悲哀と憎悪、喜びなどいろんな感情が蠢いている。だからこそ印象に残る。
正直、この作品については共感したわけではないが、彼女の感情の表現のしかたには相変わらず頭が下がる

誰かに見られているように、気取って、この場にふさわしいと思う、毅然とした態度で。周囲に馴染んでしまわないよう、急ぎ足で地階にまっすぐ下りていく。
こんな普通の文章から情景が浮かんでくるから不思議だ。江國さんの好きな人にはお薦めの1冊だ♪