広島県 仁義ある広島人 前編

今回紹介する落語はのちの安芸藩主福島正則公も出てくる豊臣秀吉公とその部下達の物語、上方落語「大閤の猿」の変形版。まずはご覧あれ♪
太閤「これ、新左(しんざ)」
新左「ははぁ〜」
太閤「世には「へつらう」という言葉があるが、それは良きことか悪しきことか。」
新左「ははッ、申し上げます。「へつらう」とは下世話で申しますと「おベンチャラ」を意味し、これは悪しきこと、武士としては忌むべきことでございまする。」
太閤「そうか、では新左はへつらわんな?」
新左「はい」
太閤「では聞く、世間では「余の顔が猿に似ておる」と言うが、誠か?」
新左「ギクッ!ハハッ。殿下が猿に似ているのではございません。猿、幸いを得て殿下に似たものかと存じます。」
太閤「なるほど、余が似ているのではなく、猿が余に似ておるか。うん?同じじことではないか(怒)!ではその幸おある猿を探してまいれ。」
新左「ハハッ」
ということで新佐は国中探して太閤殿下そっくりの猿を探してきました。そこで太閤はこの猿を世と同等の扱いをしろと無理難題を申し付ける。
そこへ部下の福島正則公がやってきた。
正則「福島左衛門尉正則にございまする。殿下にはうるわしきご尊顔の態を拝し恐悦至極に存じ奉ります」
太閤「おぉ正則か、よぉ来た。猿、行けッ」
猿は袋竹刀持って福島さんの所にかけより、首筋の所をポ〜ンッと撫でる。
正則「こらッ、何やつじゃ?」
新左「正則殿ご辛抱でござる、殿下ご寵愛の猿めにござる」
殿下の可愛がっている猿なので、怒るにも怒れない。この話を聞きつけた伊達政宗公は「猿が大名をぶつとはけしからん」といたくお怒りになり、早速大阪に出向く。
政宗公は殿下に会う前に、事前に猿のいるところに出向き、猿の首筋をグワっと掴みまして
「コリャッ、その方か? その方が大名を打つ猿か。よいか、余は明日登城する。もしその方が余を打てば、そのままでは捨て置かんぞ、その場において引っ裂いてくれる。よいか、余の顔を見ておけよ。」
さすがの猿もこれにはびびりまくり、二度とこのお方とは会いたくないと思う。あくる日、政宗は殿下の前に登場する。
政宗伊達政宗にござりまする、殿下にはうるわしきご尊顔の態を拝し、恐悦至極に存じ奉ります。」
「おう、これは伊達殿、よくこられた」
というと同時に「猿、行けッ」と合図する。猿が行こうとすると政宗がその独眼竜の顔でもってグイッと睨む。
「うわッ、きのうのオッサンや。えらい目に逢うたがな、こらあかん、逃げたろ。」
チョコチョコチョコッと殿下のそばへ戻って来た。
「猿どうした、行かぬか。」
殿下は目配せする。
「難儀やなぁ、うちの大将、昨日の件、知らんねや。」
仕方なく戻ろうとすると、今度は政宗が睨む。猿は何度も二人の間をチョコチョコチョコと行ったりきたり。
ついに我慢できず一言
「なんかモンキーあるのか」・・・・