佐賀県 がばい佐賀人 前編

「笑顔で生きんしゃい」
「走りんしゃい。走る地べたはタダ、道具もいらんと」
島田洋七さん原作「佐賀のがばいばあちゃん」の1節である。「がばい」とは「凄い」ということを意味する佐賀弁である。

どこにでもいそうなお婆さんだが、彼女が佐賀便で話すその言葉は時に楽しく、時に厳しく、そしてやさしく、佐賀の暖かさと面白さを伝えてくれる。あの作品をみて笑って涙した人もいることだろう。

がばいばあちゃん 佐賀から広島へ めざせ甲子園

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佐賀のがばいばあちゃん (徳間文庫)

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他にも佐賀を舞台にした作品には神山征二郎監督渡辺美佐子の「月光の光」、大林宣彦監督山崎勤、伊藤歩の「水の旅人」などがある。
今日はそんな佐賀県が出てくる落語泊瀬光延さん作の「葉隠れ」を紹介したい。少し長かったため一部加筆してお届けした。ご容赦願いたい。
熊「ご隠居!ごいんきょ〜!」
ご隠居「な、なんだい、あれは、熊ですか。しばらく見なかったですね。」
熊「ちょっと用事があって、九州は佐賀の鍋島様の御国に行って参りました。あそこはとんでもないところでしたよ。」
ご隠居「ふふ、何がとんでもないのだい?」
熊「あすこの侍さんはすぐ死にたがるって噂をあちこちで聞きました」
ご隠居「そうだね、あそこは『鍋島律儀』って言うぐらい律儀なお侍さんが多いのだよ。」
熊「なぜですか?」
ご隠居「なんでも山本常朝ってお人が言ったことを残した『葉隠』っという本があって、それを代々大切にしてるという話です。」
熊「は、はがくれえ!?歯が黒いのかい?」
ご隠居「馬鹿だね、おまえは!山本翁は深山に引きこもって棲んでいたので、聞き書きした人がそう名付けたのだろう。」
熊「へえ〜。で、そこには何が書かれているのですか?」
ご隠居「『武士道は死ぬことと見つけたり』っていうのが有名な台詞だ。」
熊「この間は、元気なお侍は土地と家の為に死んだって言っていたよな。今度は何の為に死んでしまったのだい?」
「もう忘れてやがる。それは「元亀天正(げんきてんしょう)」の侍だろ。山本翁の言っていることは、侍の心意気だい。」
「土地じゃないのかい?」
「この『葉隠』の言っていることは「無私の奉公」よ。」
「ムシの奉公、俺ならそんなのムシして遊んじゃうね。」
「戦国の時代が終わり、土地を守った時代は変わってしまった。生き残りを賭けた戦いはもうないし、主に目を掛けられなければお役目も頂けない。この人は仕えさせて貰った主(あるじ)の『恩義』を第一と考えたのだな。」
「ふーん。殿様に可愛がって貰ったからかい。」
「鍋島家ちゅうのはもともと大名じゃない。戦国大名だった龍造寺家に跡継ぎが無くなったので豊臣の太閤様から国を建てることを赦されたんだ。せっかく貰ったその国を守るために藩祖の直茂公、初代藩主の勝茂公はえらい苦労をしなさったということだ。」
「藩主って大変なんだなあ!」
「そうよ。そら、赤穂の福島様のようにつむじ曲げちまって閉門された御大名もあるが、鍋島様はそらもう、真摯にお家を守りなさった。」
「それが『葉隠』かい。」
「『葉隠』はそのお殿様が家臣を大事になされた結果よ!」
「やっぱり。サムライ魂あるだけあってさ(す)がぁ偉いよ(佐賀ハエライヨ)
今日はちょっと苦〜しい(悲)
(つづく)