大分県 ヨロシモーシチョクレ 前編

sakurasaku20052006-07-11

大分県出身者なら誰でも知っている「吉四六」さん。
別に焼酎ではない。
吉四六さんは、江戸時代に実在した人物で本名を「廣田吉右衛門」という。大分では「小学校の教科書でこの民話を習う」と聞く。そこで今日はおかしな県民性はこの吉四六さんの民話を紹介したい。
(写真は諏訪湖湖畔に公園にいたカモ。実は吉四六さんを話している(当然嘘です)
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標準語バージョン

昔、豊後の国野津では性悪キツネが村人たちを騙して困らせていました。
ある晩、吉四六さんは、釣り竿とわざとフナを2、3匹入れたビク(魚籠)をもって村の溜め池に佇んでいました。
そこへ、若者に化けた性悪キツネがやってきました。
吉四六さんよ、こんな寒い晩に何頑張ってるの、こんな池では魚は釣れないだろうに。」
吉四六さんは、心の中では、“くそ、この化けモンが” と思いながら、おくびにも出さずに丁寧に答えました。
「釣れるよ、釣れるとも。このビク見てくれよ。」
魚籠をみて、化けギツネはいささか驚きました。
「本当だ。大きなフナが釣れている。私にも釣り方を教えてくださいよ。」
吉四六さんは、勿体付けて、“タダでは教えられないよ”と、言いました。
化けギツネは、姿を消すや、あっと思うまに塩鯖を三匹、両手に抱えて、戻ってきました。きっと、どこかからかすめ取ってきたものでしょう。
吉四六さんは内心ホクホクしながら、キツネの献上品を懐にして、すました顔で魚の釣り方を伝授します。
それは、足を池の岸に踏ん張って、尻と尻尾を池の水に浸けておくという方法です。
「そうするとね。フナのヤツが尻尾に食いついてくる。頃合を見はからって、一気にくるっと尻を岸に回すんだよ。フナたちはいっぺんに釣り上げられてしまうよ。簡単さ?」
フナを釣ることで頭がいっぱいの化けギツネは、深く考えずに言われたように尻尾を池に浸け、寒さにブルブル震えながらじっと我慢して待ちました。
そして、吉四六さんはいなくなりました。
キツネはというと、勿論、フナは一行に釣れません。
池はだんだん凍ってきて、さっきから尻尾はちくちく痛み始めました。
・・・あれれ、東の空が白みかけた。
人間に見つからない内に巣に帰ろう。
キツネは焦りますが、立とうとしても、尻尾が抜けません。
「ま、大きなフナが食いついているのだろ、ちょっとくらいは痛いよな。」、
と期待半分、悲しさ半分、池の岸でまだ、足を踏ん張っていました。
夜が明けかると吉四六さんは犬を引っ張って様子を見にやってきました。
案の定、化けギツネが尻尾を抜こうとバタバタしていてえらい騒ぎです。
キツネは犬が大嫌い。
ほれっ、
と犬をけしかけると、うなり声をあげて今にもかみつきそう。
犬の迫力に仰天したキツネは、尻尾をプツンと切って逃げ去りました。
(つづく)

大分弁バージョン

昔、豊後の国野津ではカチクラワシたろかというようなキツネが村人たちを騙しち、困らせておったんで。
あん晩、吉四六さんは、釣り竿とわざとフナを2、3匹入れたビク(魚籠)をもっち村の溜め池に佇んでおったで。
そこへ、若者に化けた性悪キツネがやっちきたで。
吉四六さんよ、こげなさみぃ晩になんぼ何でん、こげん池じ魚は釣れめえ」
吉四六さんは、心の中では、“くそ、こん化けモンが” と思いながらもおくびにも出さんと丁寧に答えたで。
「釣りじかり、釣るるっちも。こるぅビク見ちみない」
ビクをみて、化けギツネはいささか驚きたで。
「ふんとや。大けなフナが釣れちょる。ワシにも釣り方を教えちぃくれ」
吉四六さんは勿体付けて、“タダでは教えへん”と、言おったで。
化けギツネは、姿を消すや、あっと思うまに関鯖を三匹、両手に抱えて、戻っちきたで。きっと、どこなからかすめ取っちきたものやろう。
吉四六さんは内心ホクホクしながら、キツネの献上品を懐にしち、すたで顔(すました顔)で魚の釣り方を伝授しちやったんや。
それは、足を池の岸に踏ん張っち、尻と尻尾を池の水に浸けておくちう方法やあ。
「そうすんとな。フナのヤツが尻尾に食いついてくる。頃合を見はからっチ、イキノシ(一気に)くるっと尻を岸に回すんや。フナどもはいっぺんに釣り上げられチしまうんや。わっきゃねぇ?」
フナを釣るこつで頭がいっぱいの化けギツネは、深く考えんと言われたように尻尾を池に浸け、寒さにブルブル震えながらじっと我慢しち待ちたで。
ほんで、吉四六さんはいなくなりよったんや。
キツネはちうと、勿論、フナはいっこん釣れん。
池はだんだん凍っちきて、さっきから尻尾はちくちく痛み始めたで。
・・・あれれ、東の空が白みかけたけん。
人間に見つからん内に巣に帰ろう。
キツネは焦りちょんけど、立とうとしちも、尻尾が抜けん。
「ま、大けなフナが食いついちょんんやろ、ちぃーとくらいは痛いわさ」、
と期待半分、悲しさ半分、池の岸でまだ、足を踏ん張っちおったで。
夜が明けかるっち吉四六さんは犬を引っ張っち様子を見にやっちきたで。
案の定、化けギツネが尻尾を抜こうとバタバタしちょっちえらい騒ぎやあ。
キツネは犬が大嫌いやけん。
ほれっ、
と犬をけしかくん(けしかける)と、唸り声をあげて今にもかみつきそう。犬の迫力に仰天したキツネは、尻尾をプツンと切っち、逃げ去ったんや。
(つづく)
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