手術の朝

sakurasaku20052006-02-27

すっきりした青空とは裏腹に頬を切る風は冷たい。
手術の日の朝を迎えた。
といっても掌の腫瘍を取り出すだけの簡単な手術だ。
私は会社を早退し、一人病院に向かった。
午後一で受付を済ませ、待合室で待つ。今日はなぜかひと気が少ない。
しばらくして○○さんと名前を呼ばれる。
診療室に入るとすぐに手術台のある部屋に案内された。ほとんど光の入らないその部屋は見上げると電灯の照明だけが煌々と光っている。
何か異様な雰囲気が立ち込める部屋、白夜行の世界にでも来た様だ。
「先生が来るまで手を広げてこのベットの上で横になって待っていてください。」
年配の看護婦さんが優しい口調で、でも有無を言わさぬ口調で私に語りかける。
ベットに横になると、近くでカチャカチャと金属が触れ合う音が聞こえてくる。注射針でも整理しているのだろうか。病院でこの音を聞くのが私は一等嫌いだ。
なんとなく不安になって
「あの、手術はこのベットの上でやるんですか。」
なんて、当たり前のことを聞いてしまった。
「あたりまえじゃないですか。」
即座に明快な答えが返って来た。少し腹立たしげな口調で。
あの看護婦さんはきっとおなかがすいているに違いない。
しかし、ここでは私はどうやら黙っていた方がいいようだ。
今日のさくちゃんは何位だ〜人気blogランキング
30分程待たされただろうか。先生が入ってきた。
「では、はじめます。準備はいいですか。」
いいどころではない。気の荒い豚だって、30分も調理台の上で待たされたらかんねんするに違いない。とっくに覚悟は出来ている。出来ることなら早く終わってくれ。私はそう念じつつも「はい」とだけ答えた。
いざはじめるとなると鼓動が早まる。
消毒されたガーゼで手のひらを丹念に拭かれ、先生が眼鏡の奥から傷口をじっとみる。
そして、おもむろに注射針を取り出したかと思うと、私の手のひらめがけてブスっと刺す。その針はイエス・キリストを十字架のように潔く、そしてまっすぐ私の体の中に入っていった。針が手の中でぐにっと動く。
痛い!だが、痛かったのはそこまでだった。次第に手の感覚がなくなり、痛いというより自分の手がしびれたような状態、1時間もかからず手術は終わった。
それより気になったのは途中、先生が言った「おい、血が止らんぞ」とか「何だこれは」とか「うーん、思ったより深いなこれは」という言葉だ。
先生、思ったことを患者の前で口に出すのはやめよう。
とにかく手術は無事終わった。しばらく左手を使うには不自由だが、1週間もすれば抜糸でき、傷口はふさがっていくだろう。
現在、左手は麻酔が効いた状態で感覚がない。
これから夜にかけては血が出るそうだが、今のところブログを書くには支障がない。しばらく、ブログを書く量は減ってしまうかもしれないが、私としては良い経験をしたと思う。