夏目漱石の坊ちゃん

博士の愛した数式を読んで、夏目漱石の「坊ちゃん」も数学の先生だったと思いもう一度読み返してみたくなった。私が「坊ちゃん」を読むのは3回目である。
夏目漱石東京帝国大学卒業後、一時期松山中学の教員をしていた経験からこの作品は生まれた。彼が一気に書き上げたというだけあって、文章がテンポよく、時に笑いを交えながらスピーディにまとまっている。
これほど読んでいるだけで作品のイメージが浮かぶ作品は珍しいと私は思う。
赤シャツ、野だいこ、うらなり、山嵐、狸、彼を取り巻く登場人物はあだ名をいっただけで、その人がどんな恰好をしていてどんな性格であるか自然に浮かんできてしまう。
「君は一体どこのうまれだ」
「おれは江戸っ子だ」
「うん、江戸っ子か、道理で負け惜しみが強いと思った」
「君はどこだ」
「僕は会津だ」
会津っぽか、強情な訳だ。」
山嵐と坊ちゃんの会話のように活劇風にテンポ良く書いてあるので、知らず知らずにどんどん作品の中に引き込まれてしまう。
だから、明治の作品でありながら、親しみやすく読め、日本で一番多く読まれている国民的作品なのだと思う。
何かにムシャクシャしたとき、日頃の生活に空虚感を覚えたとき、この笑いの小説を読んでみると自分の悩んでいることなんて大した事ないと思える作品である。