父 相田みつを

今尚、熱烈な相田みつをファンが大勢いる。私もその中の一人である。
この本は息子の相田一人さんが父相田みつをの生き方を、そして親からの心のメッセージを書いた本である。
彼は父の作品を人生訓ではなく詩だと言う。

人生訓とは教え諭す意味が強い。
感動は教え諭すというような高い所から低い所へというような流れでは起こらない。自分と同じ地平から発した言葉でしか、人は感応しないのではないか。

私もそう思う。だから相田先生の作品はずしりと心に響いてくる。
自らも足に大怪我を負った父の亡くなる間際の心境を綴った「月の砂漠」の章は涙なくして読めない。私も一緒になって父のことを思ってしまった。


長い人生にはなあ
どんなに避けようとしても どうしても通らなければならぬ
道というものがあるんだな
そんなときはその道を 黙ってあるくことだな
愚痴や弱音をはかないでな
黙って歩くんだよ
ただ黙って 涙なんか見せちゃダメだぜ
そしてなあ そのときなんだよ
人間としての いのちの根がふかくなるのは

父が子に伝えたこの詩は何回読んでも涙目になる。
そんな感動がつまった私の心の1冊である。