男たちの大和(YAMATO)の感想

日曜日、友人のN君と二人で男たちの大和(YAMATO)を見た。私にとっては今年最後の映画館で見る映画だ。
あまり期待しないで行ったせいもあるが、良かった
あまりドキュメンタリー化されない日本の戦争について、第2次世界大戦下、兵士たちがどんなことを思って戦っていたか、そして愛するものを戦地に送る女たちはどんな気持ちでいたか、そんな気持ちに少しだけ触れたような気がした。
戦争を知らない世代の私にとっても、戦争はしてはいけないものだと感じさせてくれる映画だった。

映画について

この映画、原作は第3回新田次郎文学賞を受賞した辺見じゅんさんの男たちの大和。監督は『人間の証明』『空海』『敦煌』で知られる佐藤純彌さん。そして音楽が久石譲さんと巨匠揃いだ。
ドキュメンタリーをベースにしているだけあって実話も多い。
映画に出てくる内田二等兵中村獅童)が山本五十六元帥から貰った短刀の話は実話だそうだ。あれだけの年少兵たちが当時の最新鋭戦艦大和に乗り込んだかはわからないが、当時15歳ぐらいの年少兵が大和の乗組員となり戦火に散っていったらしい。
そして、キャストも幅広い。
物語の中心人物神尾克巳役に仲代達也*1、そして神尾の上司内田二等兵中村獅童、その良きライバルであり親友であった烹炊所の森脇班長反町隆史、唐木二等兵山田純大。「死に方用意」について名言を吐く臼淵大尉に長島一茂、第二艦隊の伊藤指令官庁に渡哲也、大和5代目艦長に奥田瑛二と男性陣はまさに幅広く豪華だ。
女性陣も内田の娘役に鈴木京香、昔の恋人役に寺島しのぶ、そして神尾の幼馴染の妙子役に蒼井優となかなか良かった。
神尾(松山ケンイチ)の仲間の年少兵については、制服を着ると正直、みんな同じ顔に見えだれがだれだかわからなかった(T_T)

ストーリー

2005年4月6日、一人の女性(鈴木京香)が鹿児島県枕崎の漁港を訪れ、老漁師の神尾(仲代達矢)に北緯30度43分、東経128度4分まで船を出してほしいと懇願してきた。その位置は、60年前の昭和20年4月7日に戦艦大和が沈んだ場所である。まっすぐに前方の海を見据える神尾の胸に、60年前の光景が甦っていく……。
 昭和16年12月8日、日本軍の真珠湾奇襲によって始まった太平洋戦争。17年6月のミッドウェイ海戦での大敗以降、日本軍は劣勢を強いられ、じりじりと追い詰められていく。
そんな昭和19年の春、神尾(松山ケンイチ)、伊達(渡辺大)、西(内野謙太)、常田(崎本大海)、児島(橋爪遼)ら特別年少兵をはじめとする新兵たちが、戦艦大和に乗り込んできた。

戦艦大和

全長263m
全幅38.9m
平均喫水(水面から船底までの長さ)10.58m
最大速度27.46ノット。
私の中の戦艦大和はとても恰好良い戦艦であった。
だが、現実の大和は決して恰好良いものではない。アメリカ空軍にたくさんの砲撃や魚雷を受けて、沈んでいく大和の姿は少し情けない姿ではあったが、リアリティ感があった。
さすが総額6億円をかけ大和を再現しただけのことはあり、戦闘シーンは迫力がある。

印象に残ったところ

私はふたつのシーンが印象に残った。
ひとつは大和の沖縄特攻出撃の前夜、内田が病院を抜け出し恋人の芸者文子(寺島しのぶ)に会いにいった旅館でのシーン
「うち、あんたのこと抱きしめときたいんよ」
赤い着物を着た文子の姿と傷だらけの内田の背中が妙に切なく胸に残った。
もうひとつは臼淵大尉が海軍の兵士たちを諭すシーン。
「これじゃただの犬死にじゃないですか。自分たちが死ぬ意味はあるのですか」
「敗れなければ分からないことがある。もはや日本は、敗れて目覚めるしかない。我々はその先陣として死に行くのだ」
敗れなければ分からないことがある。この言葉にはジーンときた。
失敗してはじめてわかることがある。本当にそう思った。
細かな時代考証については少し?の部分もあったが、私にとってこの映画は愛する家族を守るため男の姿が描かれた作品であり、男たちの熱い想いが込められているようで良かった。
なかなかの力作だと思う。
女たちの大和 (ハルキ文庫)また小説では女性の視点から見た同じ辺見しゅんさんのおんなたちの大和も面白い。

*1:若き日の神尾には松山ケンイチ。というか映画のほとんど彼が神尾として出ている