「私を変えた出来事」エッセイ最終稿

多くの人に感想をもらったおかげで最後の原稿ができた。
ありがとう。皆さんのおかげです。最後は自分で納得できる文章ができました。ほんとにありがとう♪
僕を変えた1冊の絵本

悲しい本 (あかね・新えほんシリーズ)

悲しい本 (あかね・新えほんシリーズ)

ワンクリック♪あなたも一歩前へさくちゃんの甲信越blogランキング



 絵本なんて子供が読むもの。そう思っていた私が、この春、絵本セラピストになった。絵本セラピストとは、その時々の気持ちや感情に合わせて大人向けに絵本を読む人をいう。私の心にどんな変化があったのだろう。
 私を変えたのは1冊の絵本。マイケル・ローゼンの『悲しい本』。大切な人を失った男の物語。絵本セラピストのたっちゃんが読んでくれた。そのとき、なぜか目から頬をつたわり涙がこぼれた。ふつう、いい大人は簡単に衝撃を受けたり、泣いたりはしない。


 絵本に思い出はない。幼い頃、母はよく絵本を読んでくれた。寂しかったのだろう。忙しくて家にいない父の悪口を言った。私は黙って聞く。絵本よりその言葉の方が記憶に残った。本当は傷ついていた。父への言葉は自分が否定されているように感じたから。ただ黙って、いい子を演じた。『悲しい本』の中で男は、どうしようもない悲しみを詩に書くことで自分の感情を癒していく。絵本セラピストは、ただ読むだけでなく、そこから質問しどう感じたかを紙にかかせる。私は悲しみを書いた。悲しみはいたるところにあった。書いていくうちに気づいた。悲しみは愛の裏返し。傷ついたと感じたのは母を愛していたから。その感情に気づいたら目から涙が溢れた。ボロボロ泣いた。止められなかった。


 絵本には不思議な力がある。そもそも絵本は子供たちに素敵な大人になってほしいという願いがこめられている。だから、たとえ幼児向けの絵本であっても、聞き方によって大人も子供と同じように、泣いたり、笑ったり、愛情を感じることができる。しかも絵本の解釈には正解がない。文字も少ない。だから、行間を読む。イメージする。音を聞く。そこには大人だからこそ理解できる感覚がある。


 この体験を多くの人に伝えたい。伝えよう。そう思った私は、東京まで行って絵本セラピーを学んだ。そして、いま、私は絵本セラピストとして大人のために絵本を読んでいる。