さくちゃんの文章塾課題エッセイ。

今日は予定を変えて僕のエッセイ第4稿をUPしたい。
昨日アリスさんからとても素敵なアドバイスを頂き、書き直してみた。
いよいよ締め切りは明日。(今日の気分の絵本はコレ)

すてきなおくりもの (コクヨのえほん 海外絵本シリーズ) (WORK×CREATEシリーズ)

すてきなおくりもの (コクヨのえほん 海外絵本シリーズ) (WORK×CREATEシリーズ)


満天どんに最後は「満点とりなさい」っていわれたけど、もう点数は何点でもいいんだ。ただね。苦しくても、何度も何度も書くことで自分の文が好きにはなってきたよ。
今まで僕の文章塾原稿を読んでくれた人、感想をくれた人、いまは、すべての人に『ありがとう』といいたい。


課題テーマ「私を変えた出来事」第4稿
 はじめて会った時、彼は絵本を読んでいた。
彼は絵本ソムリエ。読んでいたのはマイケル・ローゼンの『悲しい本』。大切な人を失った男の物語。初めて朗読を聞いたとき、耳から伝わる心地よいアルトの声に、まず引き寄せられた。ふつう40歳を超えると、人は簡単に衝撃を受けたり、変わったりしない。それが、絵本の中の男の言いようもない悲しさに、胸がぎゅっと締めつけられた。

 幼い頃のことだ。母はいつも、ほとんど家にいない父の愚痴を言っていた。私は黙って聞く。本当は聞きたくなかった。父への言葉は自分も否定されているように感じたから。ただ母に愛されるために自分はいい子を演じた。それが自分の役目だと思っていた。しかし、心は傷ついていた。段々、心の傷は深くなり、母とは距離をおくようになっていった。


 悲しみはどこにある?いたるところにある。
『悲しい本』のこの場面に、子供の頃言えなかった自分の感情に気づいた。私はやせ我慢をしていたのだ。悲しみは私のいたるところにある。そのことに気づいたら、涙がこぼれた。そして癒されていく主人公をみて母だけが悪いわけではないと思った。お互いが愛情表現を間違えていただけ。そう思うと母を許せるようにもなった。


 子供が読むものと決めつけていた絵本に、大人になった自分がこれほどまで揺り動かされるのか。その体験に、強い衝撃を受けた。 
絵本には不思議な力がある。解釈には正解がない。文字も少ない。だから、行間を読む。絵を見る。音を聞く。そこに大人だからこそ理解できる感覚がある。たとえ幼児向けの絵本であっても、笑顔になったり、涙を浮かべたり。読むほどに感情が溢れてくる。かつて子供だった大人が、子供と同じように素晴らしい感情体験ができる。


 この体験を多くの人に伝えたい。伝えよう。そう思った私は、今、大人のために絵本を読んでいる。

今日も最後まで読んでくれてありがとう。