「アルジャーノンに花束を」の感想

ひとのしあわせってなんだろう。
連休中、ダニエル・キイスの「アルジャーノンに花束を」を読んだ。
物語の概略はこうだ。
パン屋の店員チャーリイ・ゴードンは32歳でIQ68知恵遅れだが、明るく温かい青年だった。その彼がある日、ネズミのアルジャーノンと一緒に画期的な脳外科手術を受ける。手術を受けたチャーリイはIQ180の超天才へと変貌していくが……。(目録より)
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以前、ユースケ・サンタマリアさんと菅野美穂さんのドラマを見たことがあるが、改めて読み直すと、とても奥の深い作品である。

アルジャーノンに花束を DVD-BOX

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作品の中の彼から「人から愛されたい」という気持ちがとてもよく伝わってくる。だが、彼が頭がよくなればなるほどそれは報われない。
この本を読んで、鈴木秀子さんの「人から承認を得ようとする努力をやめることで、人から多くの承認を得られるのだ。つまり人から愛されるただ一つの秘訣は、自分をよく見せないことである。」という言葉を思い出す。
彼は知能と引き換えに、自分の周りにいた人々の裏側の感情、素顔まで知るようになる。それは懐疑から憎悪へ、そして恐怖から憂慮へと変わっていく・・・
この彼の心情の変化を繊細にとてもよく描かれている。
大多数の人がチャーリイ・ゴードンと自分の人生を重ね合わせ、彼の生き方に涙したことだろう。
だけど、私は泣かなかった。
本当の幸せとは何なのか。天才と呼ばれたが故の孤独、知らなくてもいいことをわかってしまったが故の悲哀。そうしたものを解き放ってくれる光が見えたからだ。
だけど、最後の下りはぐっとくる。
それも全部平仮名で書くなんて、ずるい。正直、泣きそうになった。
ちょっとだけ最初の部分が読みにくいのが難点だ(笑)
自分の昇進ばかり気にするニーマン教授、親身のようで実は冷静な精神分析医ストラウス博士、チャーリーに愛されたアリス、自由気ままなフェイ、そして彼の友達アルジャーノン。
チャーリー・ゴードンの目から見たアルジャーノンの世界の旅へ・・・。
大切なものは何なのか、教えてくれる作品。何度読んでもいい作品である。