宮崎県 よだぎー、やっちょんな宮崎人 中編

では昨日に続き落語の続きから。
人が亡くなった後のお葬式にはいろんな人間模様が垣間見えるもの。
庄屋さんのお葬式に参列した又吉さんは大の嫁さん想い。でも彼には悪い病気があるという。果たしてその病気とは。

あん又吉さん、あんひたわりびょきがあるんやっちゃが。(あの又吉さん、あんな風に見えてもちょっと悪い病気があるんだ)」
何かね、そんびょきって言うのは(何だね、その病気って)」
人のつら見っと嫁じょのノロケ言うのやっちゃが。わりびょきじゃわ。(人の顔見るとノロケるんだよ。悪い病気だよ)」
どこん嫁じょ? え? 向こうの、えぇ〜ッ、あん嫁じょの? いい歳じゃよ、オモシリィつらしちょっよ、こんげなつらしちょっよ。おもしりこちゅう(どこの嫁、え? 向こうの、えぇ〜ッ、あの嫁さんの? いい歳ですよ、おもしろい顔してますよ、こんな顔してますよ。面白いこといいますね)」
われよくそんげな大胆なこつ言いますね。あん男のノロケだけは気をつけんといけんよ。染もん屋の大将なんて、あん男のノロケ聞くなり腰のチョウツガイ、ガチャってはずれて、いまだ に元に戻らんんじゃ(あなたよくそんな大胆なこと言いますね。あの男のノロケだけには気をつけないといけませにょ。染物屋の大将なんて、あの男のノロケ聞いたら腰のチョウツガイはずれて未だに元に戻らないんだよ)」
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ということで又吉さん、庄屋さんの思い出話がいつしかその友人の池田屋さんの話になり、そこに奉公に行っていた奥さんの話になってしまった。

「ぬきぃ時分やっちゃが。ウチが家に帰るって言うとね。行水がでくっごっ湯を沸かしてタライの中入れて待っちょってくれたっちゃろ。(暑い時分だったかな、私が家に帰るといったら、行水できるように湯を沸かしてタライに入れて待っていてくれたんだ)ウチが着むん脱いで入ろうとすっと、後ろから「われ、背中流すっや」と手拭に石鹸付けて、ウェ〜ッと背中流してくれるんやっちゃが。(私が着物を脱いで入ろうとすると、後ろから「背中流す」と手拭に石鹸つけてウェ〜ッと背中を流してくれたんだ)
「そりゃいいんじゃけんどんがよ、片方の手が空いちょるじゃろ。こん空いちょる手でウチん脇の下からお乳をちょこびるんやっちゃが。(それはいいが、片手が空いてるだろ。この空いてる手で脇にしたからお乳をくすぐるんだよ)」
「アハハハぁ〜……、こそばいどが(くすぐったい)。こんげなことしたら着むんが濡れるじゃないか。(こんなことしたら着物が濡れるじゃないか)」
「着むんが濡れていけんのなら、ウチもよろちぇ入れてもらおうかしら(着物が濡れていけないというなら、私も一緒に入れてもらおうかしら)」
「それならよろちぇへったらいい(そんなら一緒に入ったらいい)」
■おい、誰か!頼むから止めてくれ! 話がえらいことなっちょるよ
又吉さんこんげな言葉はどこ吹く風。話を続けます。
「行水から上がっと、ちゃ〜んとお膳が用意されちょるかいよ。おかずも3品。めしのお供に焼酎もちゃ〜んとついちょるかいよ。(行水から上がるとちゃんとお膳が用意されていて、おかずは3品、焼酎もついている)」
「知っての通りウチはてげ酒飲みやっちゃが。でん酒は外で飲まないで、やっぱ家で飲むに限るかいよね。「同じ酒でんよろちぇいる相手によって酒の味もこうもかわっとは」(知っての通り私は大酒飲みだ。でも酒は外で飲まないで家で飲むに限るね「同じ酒でも一緒にいる相手でこうも酒の味が変わるとは」と言っちょると」
「あんげなんめこと言って、ウチみたいなお婆さんと一緒でどこが美味しいのじゃろか」ちゅうもかい(そんなこといって私みたいなお婆さんと一緒でどこが美味しいのと言うもんで)「お婆さんなんてこつねぇどが。夫婦の間に年はない。いつまじ(いつまで)経ってもおみゃ十八、ウチハタチ、そん馴れ初めの頃んこつ思い出しちみやい(お婆さんなんてことはないよ。夫婦の間に年はない。いつまでたってもおまえは18、俺ハタチ」
「もうわれったら・・・・好き」・・・(もうあなたったら)
「おっといけん、今時分、もう家でウチん帰りを待っちょると思おるかいよ、ちょっとはよ帰って安心させちやるかいよ。またじゃろ。わりぃね。(おっといけない。もう家で私の帰りを待っていると思うので、早く帰って安心させなきゃ。さよなら。わるいね)」
「な、な、何とまっこちえぞろし、おくやみがおのろけにかわっちょる」
(つづく)