新しい門出

富山には大学時代、ともに飯を食い、ともに遊んだともがいる。
彼と私は性格も趣味も全然違っていたけれど、なぜか気があった。
高橋荘という名の4畳半の下宿で出会い、その場所で、ともに食べ、ともに麻雀し、ともに寝て、そしてともに留年した(T_T)/~~~
貧乏で欲しい物はなかなか手に入らなかったけど、
やることもなくただ漠然と時間を彷徨っていたけれど、
いつも心は満ち溢れ、毎日、明日が来るのが楽しみだった。
そこにはいつも笑いがあり、そこにいると妙に落ち着けた。
心のアルバムの1ページにセピア色した懐かしい大学時代が浮かんでくる。
今でもあの頃のことを思うとワクワクする。
私の大切な場所。大切な時間。
時は流れ、その高橋壮は、今はもう、ない。
そしてその彼がもうすぐ新しい門出を迎える。
彼にとって2回目の入社式だ。
彼は自分のことを頑固で融通が利かないというが、私から見ればとても純粋で他人より少し要領が悪いだけだ。
彼はいつも、無口でなかなか自分のことを話さない。
二人でいると喋るのはいつも私の方だったが、時折、ぼそっと喋るその言葉には何か真実があるように思えた。
私たちはなぜ働くのか。
本多信一さんは「人間が働くのは安心を求めるためだ」といっている。
彼にとっての安心は大切な家族と一緒にいることだろう。
土木工学や建築のプロであった彼にとって、今度の仕事は不慣れなもので不安はたくさんあると思う。
もともと自己表現が下手な彼にとっては新しい職場での人間関係も不安だろう。
でも忘れないで欲しい。
自分には帰る場所がきちんとあることを。それだけでも、とっても幸せなことを。
彼の健闘を祈りたい。