タッチの感想

sakurasaku20052005-09-08

私は「あだち充」が好きである。
当然タッチは全巻持っており原作は熟読した。
南ちゃん役の長澤まさみ、上原達也、一也役の斎藤祥太、慶太は結構良い演技をしている。
故にこの映画は残念である。犬童一心監督は原作があまり好きでないかもしくはあまり読んでいないように思える。「黄泉がえり」や「死に花」のようなキラッと光るものがこの映画では見られない。脚本が私には納得できなかった。
理由は大事なシーンで描写が抜けていたり、大切な台詞がカットされているからである。
一也が不慮の交通事故で亡くなって達也が病院の長椅子に佇むシーン。
「嘘みたいだろ!これで死んでいるんだぜ」
達也が南に言うこの台詞がカットされていた。一也の死という前半の一番の見所の描写が少なくあっさりと南がコンクリートの鉄橋の柱に向かって泣くシーンに移ってしまう。
甲子園地区予選決勝戦、亡き弟の想いを胸にライバル新田明男と対決するシーン。
9回二死2、3塁1点差で明青学園リード、ここで明青は敵の須見高4番の新田と勝負する。原作ではここでは新田と勝負するようエース達也に向かってナインが目配せする。この部分の描写もなかった。野球を知っている人ならここは普通なら敬遠である。だが敢えて新田と勝負するというナインの気持ちは台詞にしても良かったのではないかと思う。
この映画はタッチファンの私にとっては少々消化不良である。
全体的に脚本が原作に沿うため内容を詰め込みすぎたため、焦点がぼけてしまった気がする。特に前後半の大事なシーンの描写が少ないのが残念だ。
長澤まさみ、斎藤兄弟のフレッシュな新鮮で瑞々しい演技を見ているともっと良い映画が出来たのではと思ってしまう。