江國香織さんの薔薇の木、枇杷の木、檸檬の木
江國香織さんは不思議な作家だ。
情熱と冷静さを併せ持っている。彼女の物語はいつも淡々と進んでいくが、非日常の中に日常が、いや日常の中に非日常があって、不思議に引き込まれていく。
- 作者: 江國香織
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2003/06/20
- メディア: 文庫
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物語に登場する人物はあるときは「いい人、良き妻・夫」またあるときは「わるい人、浮気な妻・夫」。ころころと「善」と「悪」が入れ替わり、同じ人物が心の内面にその両方を持っている。
それをちょっとだらだらにちょっとユーモラスに描くことで、人間性を浮き立たせ、読んでいる読者を共感させていく。
僕が読んでも「ふう〜ん、女性ってそうなんだぁ」と思ってしまう。
彼女の物語のベースにはいつも「恋」がある。
いくつになっても、「恋」はずっとしていきたい。僕は彼女の作品からそんな想いが伝わってくる。
だいたい浮気や不倫の話はあまり好きではないのに、何も読む本がないとき気がつくと彼女の本を手にしている。
不思議な作家だ。男性にも人気が高い。
この物語の主人公は9人の女性たち
花屋のオーナー、雑誌編集者、モデル、主婦、アルバイト、会社員。
その9人がそれぞれ恋したり、されたり、結婚したり離婚したり、浮気されたりされなかったりになったり、妊娠したりしなかったり
それはもう、誰にも止められない物語。帯表紙にあるこの言葉を聞いただけで読みたくなった人もいるのではなかろうか。
僕が読んだ中ではもっとも江國さんらしい世界。ちょっとaroud40(アラフォー)に似ている。
歳をかさねていく女性にとって本当の幸福とは何かを問いかけている・・
女性の幸福は結婚だけじゃないという作者の価値観・・男性にとってはちょっと戦慄を覚えるが、多くの女性が共感するのかもしれない。
陶子、エリコ、れいこ・・この物語の主人公はいずれも主婦だ。
一見とても幸福に見える彼女たちの生活。安定を求めながらも、何かが足りなく、何か刺激を求めている。そんな彼女たちが取った行動は・・
僕にとっては非日常に見える世界。あなたにとってはどうだろう(笑)?