これが、最後だ。井上雄彦さんの最後のマンガ展

無刀。
この世のあらゆる事象の中で言葉でいいつくせるものが一体どれほどあろうか。
理屈ではない。感じるものだったのじゃ(バカボンド8巻より引用)

こんな表現が一等似合う作品展。井上雄彦さんの最後のマンガ展。
正直に書こう。「凄い」という以外に僕にはうまく言葉が見当たらない。


会場は平日の昼間だというのに凄い長蛇の列。さすが20代、30代の若者から人生を描くカリスマと呼ばれ、ときに神と崇められると聞いただけのことはある。彼の人気は凄い。ただ残念なことに見渡す限りいい歳をしたおじさんは僕だけだった_| ̄|○
「自分が描きたいものは何なのか」
その迫力と存在感・・・今時の言葉で言うと。かなりヤバい。まるで感性の鋭い天才写真家にあったようなだ。


この作品展は簡単に言うと「彼の作品の生原稿の展示会」である。
その作品とは現在週間モーニングに連載中の「バカボンド」。(そうきくと、僕らの世代は前に天才とつけたくなってしまうが是非やめて欲しい(汗
バカボンドとは戦国末期から江戸時代の混乱期。剣豪として生きた宮本武蔵を描いた作品。ただ小次郎がろうあ者だったり原作にはない彼独自の視点、価値観がある。ちなみにバカボンドとは漂流者、流浪人を意味するらしい。

ここから書くことは僕の感想で、展示会をこれから見に行くという人は余計な先入観は持って欲しくないから読まないで欲しい。

館内に入るといきなり宮本武蔵がど〜んとこちらを睨み付ける。
それだけで鳥肌がたった。
それから通路の壁面にズラリと並べられている原画をゆっくりと見ていく。
wikiで「一コマが一つの絵画として完成している」と書かれているように、そこにあるのはもはや漫画という枠を超えて、日本画展にいったようだ。


全作品描下しの作品はラフを除けば、筆1本で描かれている。マンガを少しでも書いたことがある人ならペンでなく筆で描いていくことの大変さがわかるだろう。素人の僕にだってわかる。しかもその描写はとても緻密でたとえば、石段についたコケやカビまでリアルに描かれていて、正直驚く。
若い人たちは台詞のついた1カットの小さな絵をひとつひとつ丹念に見ていたが、僕は、台詞は読まず、物語を眺めるようにその背景にあるものは何なのかを考えながら見ていった。
そしたら、ある1枚が鮮烈に僕の目に飛び込んできた。そして目に焼きついたまま、未だ離れない。
それは・・・「手」だけの作品。
武蔵とおつうの二人が手をつないでいる。指と指がそっと絡まりあって・・・
僕は今までこんなに切ないくらい悲しみと温かみのある手を描ける人を見たことがない。

うちの彼女はバカボンド「私ああいう劇画風の絵好きじゃないの。カムイ外伝みたいで・・」という。
確かにバカボンドは戦国時代の物語。剣豪というと聞こえはいいが、はっきりいえば命を奪い合う物語。女性からは敬遠されるのかもしれない。
でも彼の描く手を見ていると、人間本来が持つ温かみ、優しさが伝わってくる。


スラムダンクから18年。社会人だった僕も大人になった(あれ、変わってない汗)。

冗談はさておき、「スラムダンク」『リアル』「バガボンド」この3作品だけで発行累計部数は1億5千万部を超える。これだけの人が共感を呼ぶ人の作品、あなたも観てみたくはない?
残念ながら僕には著者が感のいい人ならわかるとおっしゃった「最後」という意味がわからなかった。だが、フィナーレは近い。

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先月久しぶりに遊びに来てくれたKUUさんの28年ぶりの女優復帰舞台が7月5日6日の午後4時から長野市緑町のリバティで行われる。
フランスの戯曲「イヨネスコ作授業」が上演され、ワンドリンク付1500円とのこと。
 
僕は井上さんの展示会に行くため週中さぼってしまった関係で残念ながらいけそうにないが、時間がある方、興味がある方は是非どうぞ♪